ラビリンスの回廊


玲奈はチッと軽く舌打ちをする。


「そーゆーことは先に言えよな。
で、いつなんだ?それ」


「満月の日です。ちなみにあと14日です」


何事もなく行くだけで早くて一週間。
帰りも同じく一週間だとしても。


「……ギリギリじゃんか」


行って帰るだけで精一杯。
誰かが持ち去っていて、もしそこに『紅玉』がなかったら……


玲奈は、ぎゅっと拳を握った。


「そんなんで、あたしが『紅玉』を探しに行くこと、王様はよく許したな。
……逃げるかもしんねーのに」


そう言いながら、玲奈はルクトに目をやった。
そして再びエマを見る。


この兄妹は、世話係でも護衛でもなく『監視役』なのだろう。


いざとなったら、玲奈の自由を奪って、引っ張って帰るに違いなかった。


王国にとっては、『紅玉』なんて有象無象の狙う入手困難なものよりも、『贄』さえいればと思うのも無理はなかった。


『贄』さえいれば、国の繁栄というたったひとつの願いは叶うのだから。


『贄』の願い──『紅玉』を探す旅に出ることを許可したのは、

それが贄の最後の願いになるから──


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