ラビリンスの回廊
「まずね、レイナがお嬢様」
無理があるだろ、というイシュトの顔。
ヴァンは苦笑いをしていた。
確かにお姫様やお嬢様という柄じゃないが、なんだかムカつく。
「で、エマが世話係」
エマは無表情のまま頷く。
今度は誰も何も言わなかった。
「俺らはさしずめレイナを護る騎士かな」
「はぁ!?この俺様が騎……」
「イシュト様」
抗議の声をあげかけたイシュトに、ヴァンの言葉が覆い被さる。
黙ったイシュトにルクトは追い討ちをかけた。
「え?騎士が不満?
じゃあ、ヴァンがレイナの未来の旦那で、イシュトはヴァンの執事でどう?」
「はぃっ!?」
「あ゛!?」
「なっ!?」
言葉は違えど、一斉に慌てた声があがる。
「うん。我ながらいい考え!
じゃ、村人たちに会ってもそのつもりで」
そう言って一人納得したルクトは、鼻歌まじりに先頭を歩き出した。
「あれ?
どーしたの、みんな。
早く行くぞー」
振り返ったルクトが、固まった三人にそう言うと、エマはチラリと三人を見て歩き出した。
唖然とする玲奈とイシュト。
それを見てヴァンは、呆れたようにくすりと笑った。