ラビリンスの回廊
その言葉に、ルクトがにっこり笑いながら振り向く。
「いや、ご主人様のお手を煩わせちゃいかんでしょ、し・つ・じ」
「なっ!?」
ルクトはにやにやとイシュトに近付くと、がしっと腕を掴んだ。
「ではお嬢様方はこちらでお休み下さい。
私とイシュトで街へ行ってまいりますゆえ」
わざと恭しくポーズをとったルクトは、ぽかんと固まったままのイシュトをずるずると引っ張っていった。
しばらくすると、ルクトとイシュトが無言で戻ってきた。
「どうした?」
そう聞いた玲奈に、ルクトは肩をすくめてみせた。
「どうもこうも……もう少し先に行ったところに森があるんだが。
狂暴な動物がいるらしいんだよね」
「狂暴な動物?」
眉をひそめる玲奈に構うことなくヴァンが言った。
「しかし、あの辺りにそんなに狂暴な獣がいるとは聞いたことがないですが……」
ヴァンの言葉に頷いたイシュトがひとこと告げた。
「たちの悪い盗賊がいるそうだ」