ラビリンスの回廊
「盗賊か……」
溜め息をついたイシュトに、ルクトはからかうように言った。
「あ~らら。たちの悪い獣、来ちゃいましたね」
「獣だぁ!?」
ルクトの言葉に盗賊たちはいきり立ち、それを見たヴァンはこめかみを押さえた。
「挑発してどうするんですか……」
「ま、いいじゃないの!
さて、お手並み拝見」
ちらりと横目でヴァンとイシュトを見たルクトは、小さく口の端を上げた。
盗賊たちが、ジリ、と囲いを狭める。
「野郎ども!奪え奪え!!
男は殺せ!女は生け捕れ!!」
ダミ声を合図に、盗賊たちが一気に襲いかかってきた。
「エマとレイナを頼む!」
ルクトはそう言い置き、すらりと剣を抜いて盗賊に向かって行った。
「イシュトさ……イシュトはここに」
一瞬詰まったヴァンに、イシュトは軽く舌打ちをした。
「お前はフィアンセを守れ。
俺が行く」
そう言うが早いか、返事もきかずに盗賊へ突っ込んでいった。