ラビリンスの回廊
「どーした??」
ルクトは、青白い顔でかたまっている玲奈に、そう問い掛けた。
髪についた血を少しでも落とすべく、エマから渡された濡れタオルでそっと頭を押さえ、まだ乾ききってない血を拭いとる。
すぐに真っ赤に染まったタオルと、幾重にも血を浴びたルクトから目をそらしながら、玲奈は口をつぐんだ。
明らかに自分に視線を合わせない玲奈に、それ以上追及することなく、ルクトはごしごしとタオルを動かした。
それに耐えきれずに口を動かしたのは玲奈だった。
「あたし……」
言いにくそうに口ごもる玲奈をやんわりと遮ると、ルクトは、思い付いたかのようにエマに言った。
「この森を抜けたら、確か村があったよな?」
エマが頷いたのを玲奈に示し、にっこりと笑いかけた。
「とりあえず、そこで飯にしよっか」
毒気のない笑顔に思わず頷いた玲奈をみて、ルクトは『良く出来ました』とばかりに大きく頷いた。