ラビリンスの回廊
玲奈の態度にハルミは一気に現実に引き戻されたらしい。
「あは……あはははは……」
ハルミの乾いた笑いに、玲奈は「もう、いい?」と背を向けた。
その途端、笑いがピタリと止み、「まだだよ」とハルミの冷たい声が空気を伝い、玲奈に届く。
ざり、と玲奈の後ろから、足音が聞こえた刹那。
トン、と玲奈の肩に何かが触れた。
「……っ!」
思わずそれを振り払い、振り返った玲奈。
「う、うわぁああ!!」
玲奈がソレを見、脳にソレが伝わった瞬間、彼女は悲鳴を上げた。
彼女の視界を覆っていたのは……
「お、おとこぉー!!」
ドゴォォォォ、という音と共に吹っ飛んだ、モデルにいそうな優男。
いわゆるイケメンだった。
男を吹っ飛ばしたと同時に玲奈は意識を失い、その場に倒れ込んだ。
その様子を見て、ハルミは満足そうに笑う。
「へぇ、イケメンしか『男』と判別しないって本当だったんだ。
サイテーだよね」
そしてゆっくりと玲奈に近付き、荒々しく足で転がした。
「……バイバーイ」
そう言ったハルミは鉄パイプを拾い上げ、玲奈の顔目掛けて降り下ろした。