ラビリンスの回廊
玲奈の返事を待たずに、イシュトは低い声で言った。
文句あるのか?という顔付きでいる玲奈に、イシュトはまっすぐな目を向けた。
紫青色の澄んだ瞳が、玲奈を映し出す。
少しだけたじろいだ玲奈に、イシュトはにやりと笑った。
「面白いな、お前」
「あ゛!?」
眉に皺を寄せ軽くイシュトを見下した玲奈に、彼はますます興味深そうにし、口角を上げた。
「……だが、気に入らん」
「あ゛!?」
「俺様と同じ考えをしているようなのは認めてやってもいいが…好かんな」
「い、イシュトさ……イシュト!
そ、それは……」
『いくらなんでも本人を前にして』と慌てた様子のヴァンに、イシュトは意地悪く言った。
「こんな考えをするやつなんて、ブラウ王国では知りうる限り俺しかいなかった。
やっといたかと思ったらシェル王国の奴だというのが気に食わん」
イシュトは黒い笑みを玲奈に向けた。