ラビリンスの回廊
フン、と玲奈はイシュトの笑みをつっぱねた。
「王国王国とうるせーよ。
あたしはあたし。
シェル王国もブロー王国も関係ない。
あんたと同じ考えだろうと、全く違う考えだろうと、あたしには関係ないね」
腕を組み、ツンと顎をあげプイッと顔を背けた玲奈に、ヴァンは吹き出した。
「……なんだよ」
視線だけを向けた玲奈に、ヴァンは笑いを手で隠しながら言った。
「あぁすみません。
イシュトさ……イシュトにそれだけ言い返す女性を、初めて見たものですから。
それを黙って聞いているイシュトもね」
楽しそうに笑うヴァンに、玲奈は何も言い返せなかった。
イシュトを見れば、不機嫌そうに口を結ぶ表情が見えたが、何も言わない。
黙り込んだ二人と、ヴァンの止まらない微かな笑いを瞳に納めながら、エマは一行に先を促した。
ルクトは珍しく何も茶化すことなく、黙って歩き出した。