ラビリンスの回廊
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──某所──
広く薄暗い部屋で、カツカツと規則的な音が響いていた。
部屋の内部は、豪華なだけであまり趣味の良いものではない。
コーディネートを考えずに、とにかく高価なものを買い漁った、という印象を与える部屋だった。
その部屋の一辺には、数段上の部分に大きな椅子が二つ並べられ、どっしりとした恰幅の良い年配の男と、若く美しい女が、それぞれに座っていた。
男の歳が50代なのに対し、女の歳は20そこそこに見える。
くすんだ金髪にところどころ白髪が生えている男とは対照的に、女は黒々とした髪色をしており、ゆたかなそれを緩く結い上げていた。
男は色味が少なく地味に見える衣装を身に纏い、女は胸元の大きくあいたきらびやかな衣装を身に纏っていた。
彼らの前には、片膝を立てながら顔を伏せた人物が一人。
椅子に座った男が神経質に、カツカツと足踏みして床の音を鳴らす様はかなり苛立っているようであり、ついに痺れをきらしたかのように目の前の人物に問うた。
「遅い!一体どうしたのだ」
その言葉に、膝をついた人物はゆっくりと首を振った。