ラビリンスの回廊
「実は、攻め入る前に行方不明に……
兵により目下鋭意捜索中であります」
「なんだと!?」
思わず足をダンッと踏み鳴らし、そう声を荒げた男はギロリと目の前の人物を睨み付けた。
「たかだか数百の兵すら使えないのかアイツは。
供がついていながら……
もういい。
早く見つけて来い!」
そう大声をあげたかと思うと、苦々しい顔をして言った。
「そして……わかってるな?」
そう念を押し、頷いたのを見て少しだけ怒りもおさまったようだ。
「はい、我が王」
という言葉に、やっと納得したのか。
依然険しい顔のままだったが、ゆっくりと頷いて背を向けた。
それと同時に、ふわり、と女が立ち上がり、蔑むような視線を目の前の人物に向けると、無言で王と共に出て行った。
「女狐が……」
小さく吐き出した言葉は、誰の耳にも届かなかった。
──────
「あっれ~?
おかしいなぁ??」
のんびりとルクトが声をあげた。
エマも少し首を傾け、無言で考え込んでいる。
玲奈たちは森を抜け、当面の目的にしていた、食事をとる街に向かっていた。