ラビリンスの回廊
森を進みながら話した内容によれば、わりかし大きな街があるはずとのことだったが。
そこにあるのは、廃屋ばかりの寂れた街だった。
「もしかして。
方向、間違った、かなぁ?」
自信たっぷりに先頭を歩いていたルクトが後ろを振り返り、えへへと舌をだしてエマを見た。
エマは「それなら途中で私が言ってます」と無表情で返す。
その間、ヴァンは一行から離れ、注意深く辺りを見てたかと思うと、何かを見つけたようにハッとした顔をした。
いち早くそれに気付いたらしいイシュトが、「どうした?」と声をかけたが、ヴァンは言葉を濁し、「気のせいだったみたいです」と無理に微笑んだ。
納得しないイシュトに、再び気のせいだと言ったヴァンだったが、その口調は有無を言わせないよう珍しく語気を荒げていた。
「まぁまぁご両人。抑えて抑えて。
さて。
飯、どうすっかね」
お腹を押さえたルクトに、エマが無言で荷物を差した。
「少しならそこに」
「ん~。
でも二人増えてるし、なるべく手をつけないでおきたいしな~」
チラチラとイシュトとヴァンへ視線を送っているルクトに、ヴァンが小さくため息をついた。