ラビリンスの回廊
「すみません、こちらも充分な食糧はありません」
そう言ったヴァンに、ルクトは「ふ~ん」と小さな声を出した。
しばらく見つめあっていた二人だったが、やれやれとばかりにヴァンが息を吐いた。
「……何かないか探してきます」
「ちょっと違うな~。
ヴァン様には『優秀な』し・つ・……」
「俺が行けばいいんだろっ」
ルクトの声を遮り、そう言ったイシュトに、ルクトは満足そうにうんうんと頷いた。
チッと舌打ちしたイシュトに、エマが自分も行くと言った。
「だめです!!」
刹那、ヴァンが大声をあげたのを、皆一様に驚いた顔で見た。
「あ……いえ、やっぱり私がイシュトと行きます。
エマはここで待っていて下さい。」
しかし…と言ったエマに「すぐに食べれるものくらいわかりますから」と言い、半ば強引にイシュトと歩いて行ってしまった。
そのやりとりを、静かにずっと見ていたルクトだったが、何も言わずに肩をすくめ、「いってらっしゃ~い」と軽く手を振った。