ラビリンスの回廊
イシュトの言葉に、ヴァンはフッと目を伏せた。
その様子を見てもなお、言葉を飛ばし続ける。
「勝てば富んだ領土が手に入り。
負けても……
邪魔な俺が死ぬ。
戦って生きながらえば、『負けておめおめと戻った』と戦犯にかけ。
討ち死にすれば、なおよし、という訳だ。
……なぁ?」
そらされたままの瞳がかすかに揺れたのを見たイシュトは、堅固な意思を示すかのような紫青色の視線を動かすことなく彼を見据えていた。
「俺様は絶対にくたばらない。
『紅玉』で戦争のない世界にしてやる……!
そして、あの女狐から父上の目を醒まさせる!」
ぎゅ、と固く握った拳に、イシュトはそう誓った。
「お供します……どこまでも」
静かに、でも確かにヴァンはそう言った。
当然だ、というように、イシュトはしっかりとヴァンを見詰め、彼に頷いた。
「では、気持ちを新たにしたところで。
レイナさんたちが待ってます。
食料になるものを何か探しましょうか」
くるりと向きを変えたヴァンに、イシュトは小さく「あぁ」と了承の意を伝えた。