ラビリンスの回廊
その様子をじっと見ていたらしいエマの視線に気付き、玲奈は怪訝な顔をする。
ミソギとかいうやつで、食ったらだめだった…?
そう思ったが、食べている玲奈の手を止めようとするわけでもない。
しかし。
つい、とそらされたエマの瞳がルクトに向かい、さりげなく「次からは私が」と小声で言うのを見て、玲奈はハッとした。
ひとつの言葉が、頭の中に浮かぶ。
『毒味』をしたのだ、ルクトは。
エマの同行を断り、持ってきた果実。
なんてことはないのかもしれないし、玲奈に危害を加える理由なんて考えつかない。
だが、念には念を入れて、というところなのだろう。
そして、エマは『戦闘要員が減らないように』次は自分が毒味をする、と言っているのだ。
兄であるルクトは、少し困ったような顔をしてエマの視線から顔をそらし、イシュトたちの表情を伺っているようだった。
幸いイシュトたちには気付かれなかったようで、気分を害させることもなかった様子。
イシュトはルクトではなく、じっと玲奈を見つめていた。