ラビリンスの回廊
あまりに短い説明で、なぜ無理なのかわからない。
でも時間が、といいかけた玲奈よりも早く、イシュトが口を開いた。
「魔峰……か。
もしそこを行ったとしたら、どのくらい短縮になるんだ?」
「……1日は短縮出来るはずです」
少し間をあけてそう答えたエマに、イシュトは間髪入れずに言った。
「ならばその道を行くぞ。
早い方がいいんだろ?」
その台詞は玲奈に向かって言ったもので。
ためらいながらも頷いた玲奈に、彼はニヤリと笑った。
「しかし、この格好では多少無理が……」
ヴァンのやんわりとした抗議の声にはイシュトは触れず、代わりにルクトが案を出した。
「まぁ火急ってことで、拝借すればいいんでない?」
くい、と民家を指したルクトに、イシュトが頷いた。
「そうだな。
では適当に……」
見繕え、とヴァンに言いかけ、ルクトの視線に気付くと、
「……見繕ってくる。……ヴァン…様の分も」
と言って、手近な民家の扉を蹴破り入っていった。