ラビリンスの回廊
拝借してきた服は、分厚い上着などの防寒具、かと思えば薄手のものなど、様々な気候に合わせることが出来そうなくらい、色々な種類があった。
その中から、エマは防寒具となるものを玲奈に着せ、残りは荷物入れにたたみ入れた。
「今の気候の分しか持ってきませんでしたから、村に寄れて良かったです」
めったに自分から話さないエマが、突然玲奈にそう言った。
少し驚きながらも「……そ」と返事をし、なんとなくむずむずしてフードに触れる。
その仕草に、ヴァンが何気なく問い掛けた。
「フード、とらないんですか?
そちらの帽子の方が、暖かいですよ?」
エマの持っている帽子をさしたヴァンに、玲奈はギクリと手が止まる。
エマは落ち着き払って─といってもいつものことだが─ヴァンを見て、ゆったりと返事をした。
「レイナさまはお帽子がお嫌いなのです。
これは私が被るために拝借して参りました」
そう言って、ぽすっと自分の頭に帽子をのせた。