ラビリンスの回廊
「ほう?俺様の口説きに反論とはな。
『不可能』な理由を教えてもらおうか」
「それは……」
口ごもったエマに、イシュトが畳み掛けようと口を開いた瞬間、ようやく正気に戻ったルクトが、二人の間に割って入った。
「はい、ストーップ!そこまで!!
エマを口説くには、まず兄である俺を通して貰わないとっ」
可愛い大事な妹ですから~、と穏やかにイシュトをあしらう。
「それだけか?」
「えっと、どういう意味かな?」
一瞬、ルクトが玲奈をチラリと見た。
玲奈はそれに気付いたが、なぜ自分を見たのかと不可解な顔をする。
ルクトはそれに触れず、イシュトの瞳の裏を覗くかのように、口元は笑いながらも真剣な目でジッと見つめた。
「だから、それだけかときいている」
「一体どこまで知って…」
ルクトの問い掛けに、慌ててエマが言葉を被せる。
「何の…っ!
……話、ですか」
頑なに唇を噛みしめてイシュトを睨み付けるエマに、イシュトはフッと息を吐き、笑った。
「フン、まあいい。
いずれわかるさ」
ぽつりと呟いた声は、玲奈の耳には入らなかった。