ラビリンスの回廊


先頭を歩いていたルクトが、唐突に立ち止まり、後ろを振り返った。


「見てごらん、レイナ。
あれが魔峰ダンブディアだよ」


指し示された前方には、真っ赤な山脈が連なっていた。


赤く見えるのは特殊な鉱物のせいなのだとエマが言うのを聞きながら、玲奈は頂の見えない高さにクラクラした。


「本当に短縮になるのか……?」


ぽつりとした呟きはエマに届いたようで、彼女は小さく頷いた。


「山脈の裾は、はるか遠くまで広がっています。
裾元をぐるりと歩くよりも、登山をした方が早いくらいに」


溜め息をついた玲奈は、自らの服装を改めてまじまじと見た。


「あんだけ高い山だもんな。
登ったらてっぺんは寒いんだろうな」


だからこんなに着込んだのか、と愚痴る玲奈に、エマはかぶりを振った。


「この山脈は、気候が変わっているのです。
それも魔峰と呼ばれる所以です」


「山の天気は変わりやすいって言うしな」


納得のセリフに、エマは再び頭を振る。


「そうではなく……」


「まあまあ、こんなとこで話してる場合じゃないっしょ?
そろそろ行くよー」


ルクトの声を合図にしたかのように、一行は、魔峰の赤い山肌に向かっていった。


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