ラビリンスの回廊


しかし、言葉で謗れるほどの体力はなく、重い体をずるずると引きずるように足を動かすしかなかった。


「大丈夫ですか?」


ヴァンが気遣って玲奈に声を掛けたが、負けん気の強い彼女にそれは逆効果だったようで、ぷい、と顔を背ける。


「どーした?もうへばったのか?」


見下すようにそう言ったイシュトにも、言い返す力はない。


歩きにくいとはいえ、なんでこんなに……と唇を噛む玲奈に、エマがボソボソと言った。


「この山脈は、気候も高度もバラバラなのです。
多分、今この辺りは空気が薄いのだと思います」


先程ルクトに遮られて聞き取れなかったことを、エマが再度言ってくれた。


いくら山歩きが慣れていないとはいえ、少し異常だと思ったこの体のだるさも、ようやく少し納得がいく。


「で……も、あん…たらは……」


ゼイゼイとした息使いで、玲奈は空気を求めながら言葉を紡いだ。


イシュトに至っては、たくさんの荷物まで背負っているのだ。


自分の体が歯痒い。

それが通じたかのように、エマは言った。


「もしかしたら、体に対する負荷も変わるのかもしれません」


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