ラビリンスの回廊


イシュトは輪から離れ、そばを流れていた小川のほとりで水の流れを見ていた。


「おい」


玲奈が声をかけても全く反応せず、じっと川のせせらぎを見ている。


あまりの真剣な眼差しに、それ以上声をかけるのをためらった。


仕方なしにイシュトの様子を見、彼の表情を見やる。


男嫌いゆえ、普段はあまり目を合わせないように努めているが、こうして横から見ただけでも容姿の良さは際立っていた。


思いかえしてみれば、ぞんざいな言い回しにも気品が漂い、ルクトの言った『高貴な血を引いている』という言葉にもなんとなく頷ける。


そんなことを考えていた玲奈に、振り向きもせず、突然イシュトが話し掛けてきた。


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