ラビリンスの回廊
「湯あみは好きか?」
「……は?」
湯あみ?と頭の中に疑問が湧くより早く、イシュトが溜め息をつきながら言い直した。
「湯あみでわからんのか。
湯を浴びるのは好きか?」
どうやら風呂が好きかと聞かれているらしいとやっと理解した。
が。
「なんで……?」
今いち理解し難い思考回路に、玲奈が首を傾げると、イシュトがやっと玲奈の方に顔を向けた。
その顔にはありありと
『聞いたことにだけ的確な返事をよこせ』
と書いてある。
カチンときた玲奈だったが、それには気付かなかったふりをしておうように答えた。
「好きだけど?」
「エマたちを呼んでこい」
「……なんで?」
その問い掛けには、舌打ちが戻ってきた。
「早くしろ」
ぜってーコイツとはもう話さねぇ……
そう心に誓いながら、玲奈は最後にイシュトを睨んで、エマたちのいる方へと戻っていった。