ラビリンスの回廊
エマたちを連れ、イシュトのそばへ戻ると、満面の笑みの出迎えだった。
なんとなくイラッとした玲奈に構うことなく、イシュトは川を指す。
「喜べ、湯あみが出来るぞ」
イシュトの意に反し、反応が良かったのはルクトだけだった。
肩すかしを食らったような顔をして、ヴァンは「私は荷物番でもしてます」と離れてしまい。
エマも無言でそのままヴァンについて行ってしまった。
ルクトは嬉々として服を脱ぎ、川へとダイブした。
残された玲奈がひとこと。
「こんな暗がりで入るヤツの気がしれないね」
そんな嫌みたっぷりの言葉を気にする風でもなく、ルクトは笑った。
「月明かりがあれば十分、と言いたいとこだけど、残念ながら新月だしねぇ。
でも、川なのにあったかくていい気持ち。
どうせ大して見えないんだから、レイナちゃんも入ればいいのに~」
「はあ!?エマと入ればいいだろっ」
何の気なしに言った玲奈に、ルクトは一瞬言い淀み、また笑顔を見せた。
「ん~……
ま、妹と入るのは卒業ってことで」
ルクトの言葉に、イシュトはチラッとエマたちが向かった方を見た。