ラビリンスの回廊
今ここに、ルクトがいたら。
エマがいたら。
そう思っても彼らは居らず、戻ってくる気配もない。
さわさわとした風のそよぎが、玲奈に息苦しさを感じさせる。
必死に切り返しを考えても、するすると思考はどこかへ流れてしまい、形にならない。
あまり時間をかけると不審がられるという考えにすら至ることが出来ず、玲奈はひたすらベンス兄妹が戻ってくるのを待った。
おし黙ってしまった玲奈に、ヴァンが知ってか知らずか追い打ちをかける。
「それは、フードに何か関係があるのですか?」
「なんで……?」
ようやく出た声だったが、カラカラにかわいた喉から発されたそれはあまりにもカサカサで、玲奈自身が驚いた。
ヴァンはそのことには触れず、小さくくすりと笑う。
「さっき、あれだけ暑かったのにとらなかったので。
それに、我々の理由は言ったにも関わらず、まだ理由を聞いてなかったことを思い出しまして」
でも、とヴァンは微笑んだ。
ヴァンの声が笑いを含んだことに気付き、玲奈は思わずヴァンの顔を見る。
「なんとなく、わかりました」
ドキリ、と心臓が跳ねた。