ずっと好きだった

「あぁ、聞いてる」


そう言ってカケルはタバコの煙を吐き出した。

普通なら、は?とか、何で?とか言うんじゃないの?

なのにカケルは何も聞かなくて…


「ねぇ、行かないの?」

「俺が行ってどうすんだよ」

「どうするって…、だって顔凄いんだよ?理由聞かないの?」

「聞かなくてもどーせ喧嘩だろ」

「…喧嘩?」


分かりきったように言ってくるカケルに、あたしはポツリと呟く。

そりゃあ確かに喧嘩したって顔だけど、でもあんなタクヤの表情を見たのだって初めてだし…それに傷だって誰がどう見てもビックリするくらいだったし。


あたしが顔を顰めたままカケルが落としていくタバコの灰を見つめていると、


「もしかしてリオ、知らねぇの?」


カケルの少し驚いた声で、あたしはすぐさまカケルに目線を向けた。


「知らないって何が?」

「アイツ、ここら辺でカナリ有名な悪だぞ」

「へ?」


思いがけないカケルの言葉に、瞬きすら忘れてて、声すら裏返ってた。


ここら辺でカナリ有名な悪。

“悪”“悪”“悪”…

あのタクヤが?

嘘でしょ、あのタクヤが悪って…

どんな悪だよ。嘘くさ…


そんな事を思ってると、馬鹿みたいな笑い声があたしの口から漏れていて、


「ハハッ…。冗談キツいし」

「そんな冗談言ってどうすんだよ」


笑ったあたしにカケルがバッサリと切り捨てた。


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