ずっと好きだった

「火」


あたしが言うとカケルは「ん」と言って咥えたタバコを突き出してくる。


「ライター」

「そんなもんねぇよ。さっきタクヤに持ってかれた」

「もぉ…」


眉間にシワを寄せるとカケルは「ほら」と言って咥えたタバコをもう一度、突き出す。

その突き出されたカケルのタバコの先端にあたしは顔を近づけ、咥えてるあたしのタバコの先端とくっつけた。


分かってんだけどこの瞬間にいちいちドキドキしてしまう自分がいる。

ジュッと焼けるニオイが広がって頭上に煙が立ち込める。


「あのさ、いい加減、女をとっかえひっかえすんの止めなよ。朝からカケルの話でいっぱいなんだから。あたしにまで被害がくんだから」

「へー…、俺って有名だな」

「そうじゃない。あたしが困る!まぁ見かけによらず成績はいいし顔もいいしスポーツだって万能だけどさ、だからって何でそう誰とでもヤんのかな?」


ムッとした言い方をしてあたしはタバコを咥え空に向かって煙を吐き出す。

カケルはあたしが見てもいい男だ。見かけはほんっとにチャラ系で茶髪のサラサラの髪をワックスで無造作に遊ばせ耳に多数のピアス。

誰にだって優しくて、その風貌に惚れる女は山ほどいる。


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