ずっと好きだった
「ねぇ、カケル!!まだ何も食べてないでしょ?これさ、作ったから――…」
ドアを開けなくても女の声は甲高くて、あたしの耳にすぐ入ってきた。
「馬鹿馬鹿し」
ポツリと呟き、あたしは深くため息を吐き捨てて階段を掛け降りた。
なんであたしはいつもカケルの為にとかカケルの顔色ばかり伺ってるんだろ。
ちょっとした一言でカケルの機嫌を損なうと何か作ったりして…
ホント子供みたい。
結局は作ったものさえも無駄になってしまうのに…。
「あーあ…。どうしよっかな、これ…」
開いている鞄の中の茶色の紙袋に目線を落とす。
自分で食べるって気分にもなれないし…
「捨てよっかな…」
呟いた瞬間、遠くの方からこっちに向かって歩いてくるタクヤの姿が目に入り――…
「タクヤ!!」
あたしはそう叫んでタクヤの側まで駆け寄った。