ずっと好きだった
カケルに向けていた目線をゆっくり逸らし、視線を下に落とす。
落とした視界にスッとカケルの足が近づいてくれのが分かって、カケルの足はあたしのまん前でピタッと止まった。
そしてフワッと包まれるような感覚が襲い、
「…ごめん」
カケルはあたしを抱き締めたままそう呟いた。
カケルの体温が伝わってくる。
人に抱き締められるって、こんなに温かかったかな?
じゃなくてカケルだからかも知んない。
でもカケルは可哀想とかじゃなくて、ただ抱き締めるって事は誰にだって出来るんだよね?
あたしの事なんて…
「ほっといてよ…」
「ほっとけねぇよ」
カケルは抱き締める力を強め、あたしの耳元で小さく呟く。
「カケル言った。…男作れって」
「ただあれはリオが泣いてる時に慰めてくれるような男って言うか…。つーか冗談に決まってんだろ」
「訳わかんない」
「分かんなくていい。俺はリオとリオの作ってくれた焼きそばパンが好きって事だけ分かってくれればいい。すげぇ旨かった」
「えぇっ、ちょ、ちょっと!!」
勢い良くカケルの身体を離すと、カケルは呆然としてあたしを見下ろす。