ずっと好きだった
「ねぇ、何?」
問い掛けるあたしにカケルは、また笑って誤魔化し、
「残りの焼きそばパン食わねぇと」
そう言いながら、あたしに背を向け歩いて行く。
だけど――…、
「ねぇ、カケル!」
カケルの背後に向かって叫び、あたしはカケルの腕をおもいっきり掴んだ。
掴んだと同時にカケルは倒れこむようにクルッと後ろを振り返り――…
その拍子に見上げてたあたしの唇とカケルの唇が重ね合った。
事故からくるキスってこの事なんだろうか…。
突然の出来事に目を開けたまま停止するあたしに、カケルはそっと唇を離し、
「何?リオ、誘ってんの?」
カケルは嫌な笑みを浮かべ、あたしに耳に顔を寄せてきた。
突然なさっきの出来事もあった所為か、顔が火照りだすのかが分かる。
「誘ってない…」
「いいよ。ここでも」
「バカ…」
目を逸らして呟くあたしに、カケルはうっすら微笑んで、
「ずっと一緒にいような」
そう言ってくるカケルが本当に好きだと思った瞬間だった。
本当は出会った頃からお互い好き同士だったんじゃないかって馬鹿げた考えもした。
でも、本当に心から気持ちが通じあった時、凄い幸せって思った。
やっぱしカケルは、あたしにとって大切な人。
この先もカケルしかいない。
「離れないよ…」
そっと微笑んで手を取り合い、初夏の太陽があたし達を赤らめる。
暑い真夏の恋――…
【END】
2010.1.1