君のぬくもり(短編)
『なんで?』
僕の左手はしっかりと君の右手に触れていた。
離したくなかった。
離してしまえば
もう君は帰ってこない気がしたんだ…
「お父さんの仕事の都合で、引っ越すことになったんだ…」
『おばあちゃんやおじいちゃんも?みんな引っ越すの?』
「おばあちゃんとおじいちゃんは今の家に残るみたい。私たちだけ行く。」
中学3年、最後のクラス替えで僕たちは同じクラスになった。
話したこともなかった君の、授業中の真面目な態度や
休み時間に見せるおどけた笑顔に
僕はすぐに夢中になった。
調理実習の班が一緒になったことがキッカケで
少しずつ話す機会が増えた僕たち
僕からの告白で
僕らは付き合い始めた。
7月を前にした暑い日だった。
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