女優デビュー
私は頬を引きつらせながら、なんとか微笑んだ。

「だ、大丈夫です……」

すると奏真君は「そう、それならいいんだけど」とまだ幾分心配そうな表情で返事をしてくれた。


ああ、きっと私、奏真君に挙動不審な奴って思われた……


学さんに見とれてちゃダメだ。

お仕事、お仕事。

集中しなきゃ!

私は気持ちを切り替えて、姿勢を正した。


そうこうするうちに主要キャストが全員そろい、自己紹介が始まった。


新人の私は当然、一番最後。


自分の番が済むまで緊張して、他の人の挨拶なんて正直ちっとも頭に残らない。

まあ、皆さん私のよーく知ってる有名な俳優さんばかりなので全然問題ないんだけどね。


「じゃあ、次、綿貫千夏さん」

「はい!」

プロデューサーさんに指名されて立ち上がった。

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