女優デビュー
「あんまり学さんと仲良くして欲しくないな」

「え……」

至近距離でそんなことを言わたら、私――


タッタッタッタッ……

その時、前室に向かって廊下を走ってくる足音が聞こえてきて、奏真君は私から体を離した。


はぁぁ~、助かった。


「そろそろお願いします!」

足音の主は、私たちを呼びに来たスタッフさんだった。

「はい、今行きます!」

奏真君は何事もなかったように元気に返事して立ち上がった。


私も行かなきゃ。

気持ちを落ち着け、立ち上がろうとしたら、奏真君が手を差し伸べてくれた。

ニッコリ微笑んで、さっきのシリアスな雰囲気はかけらもない。

私もぎこちなく微笑み返し、手を借りて立ち上がった。


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