女優デビュー
――――
――――――

「お疲れ様でした!」

私はスタジオを出ようとしていた悟君に声をかけた。

悟君は申し訳なさそうに眉を寄せた。

「千夏ちゃん、今日、付き合えなくてごめんな」


私は笑顔で首を振った。

「そんなこと気にしないでいいですよ。
そちらのお仕事の方も頑張って下さい」


悟君は単発ドラマの出演が決まって、そっちの現場へ行くため、他のキャストより先に収録を終えたところだった。


「うん。
でも、これからしばらく掛け持ちになるから、1ヶ月くらい練習に付き合えなくなっちゃうと思うんだ」

「そうですか……
でも実は、学さんが代わりに見てくれるって言って下さったんです。
だから、私にことは本当に気にしないで下さい」

私がそう答えると、やっと悟君は表情を和らげた。

「学さんが……
そっか、それならよかった」

< 105 / 260 >

この作品をシェア

pagetop