女優デビュー
「お疲れ様です……」

私は差しさわりのない挨拶をした。

私たちの微妙な空気を察した学さんが、明るく奏真君に声をかけた。


「今、悟の代わりに千夏ちゃんのセリフ練習に付き合ってたんだ。
ちょうど一区切りついたとこ。
なんか俺に用か?」


学さんに聞かれ、奏真君は学さんに紙袋を渡した。

「ああ、えっと、これ、前に言ってたやつです」

「ああ、サンキュ」

学さんが紙袋の中身を確認したとき、学さんのマネージャーさんが入ってきた。

打ち合わせがあるようだったので、私は席を立った。


「じゃあ、私はこれで。
ありがとうございました」

「ああ、ごめんな、短い時間しかできなくて」


そう言う学さんにお辞儀をして楽屋を出ると、奏真君も続いて出てきた。

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