女優デビュー
奏真君は眉尻を下げて言った。

「千夏ちゃんが謝ることはないよ。
でも、俺、千夏ちゃんのことは何でも知りたいんだ。
隠し事とかされると、俺だけのけ者にされてるみたいに感じちゃって……悲しいよ」


「え、そんなこと……
のけ者にしているつもりなんかないよ。
もともと、演技のことで私が悩んでたら悟君が相談に乗ってくれて、練習することになっただけで。
悟君は事務所の先輩だから、付き合ってくれてるだけだし。
学さんだって、たまたま私と悟君が練習してるのを知って、協力してくれるって言ってくれただけだし」


私が必死に弁解すると、やっと奏真君は微笑んでくれた。


「わかった。
でもさ、俺やっぱり妬いちゃうから、これからは学さんじゃなくて俺のとこに来てよ。
俺が悟の代わりに練習付き合う。
いいだろ?」

すがるような目でそう言われたら、断るなんてできない。


「うん、わかった……」


私は戸惑いながらも頷いた。

< 111 / 260 >

この作品をシェア

pagetop