女優デビュー
「えー、だめなんですかあ?
学さん、たまには飲みに行きましょうよお」


中から奏真君の声が聞こえて、私は手を止めた。

話の腰を折ったら悪いから、話に一区切りついてからノックしよう、そう思ったのだ。


「悪いな、でも本当に今日は仕事だからさ」

「えー、この前もそんなこと言ってたじゃないですか?
付き合い悪いっすよ」

「ごめん、そのうち埋め合わせるから」

「絶対っすよ」

「ああ」


どうやら奏真君の誘いを学さんが仕事のために断ったみたい。

もういいかな、そう思い、私はドアをノックしようとした。

そのとき――


ガチャッ


目の前のドアが開いて奏真君が出てきた。

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