女優デビュー
「わっ!
びっくりしたあ!!」

ドアが顔にぶつかりそうになって慌てて私が後ずさると、出てきた奏真君も目を見開いた。


「千夏ちゃん?」


奏真君はドアを閉め、廊下に出てきた。


「また、学さんに用事?」

ちょっと不機嫌そうにそう言われ、私は慌てて言いつくろった。


「あ、いや、奏真君の楽屋行ったら淳君がいて、奏真君は学さんの部屋に行ったよって教えてもらったから、こっちに来てみたの」


私が笑顔を作ってそう言うと、奏真君は表情を和らげた。

「あ、そうなんだ。
俺に用事?」

「うん」

私はニコニコと頷いた。


「ほら、この間、約束したでしょ?
悟君がだめなときは奏真君がセリフ練習に付き合ってくれるって……」


どうせ、学さんが仕事なら、今日は奏真君に頼むしかないもんね。

奏真君も学さんに断られたんなら、今日は暇だろうし。

当然了解してもらえると思っていた私は、奏真君の返事を聞いてあっけにとられた。

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