女優デビュー
ガチャ

私の後ろで学さんの楽屋のドアが開いた。


「あれ?千夏ちゃん?」


出てきた学さんに声をかけられ、私は振り向いた。


「ああ、学さん……」


「あ、もしかして、俺の部屋に来たところ?
今日のセリフ練習のこと?」


私はあいまいに頷いた。


奏真君に会いに来たんだけどね。

それに、どうせ学さんにも今日は断られるのがわかってたし。

ところが――


「いいよ。
じゃあ、また、終わったらここに来て」


へ?


「あ、あの、いいんですか?
今日、お仕事とか……」


「いや、今日は大丈夫。
この間みたいにマネージャーに邪魔されることもないはずだよ」

< 132 / 260 >

この作品をシェア

pagetop