女優デビュー

私がほっとして悟君にお礼を言っているいると、後ろを通りかかった人が色紙を覗き込んできた。

「さすが売れっ子は違うね。
さっそくサインねだられたんだ」


声に驚いて振り返ると、


学さん!


きゃーーーーっ!


至近距離で目が合って、心臓が飛び出すかと思った。


「あ、いえ、あの……
と、友達に頼まれて……」

うわっ、私、かっこわるっ。

憧れの学さんとの会話の第一声を思いっきりかんでんじゃん。


へこんでいる私をよそに、学さんは色紙を取り上げて見て、また返してくれた。

「ふーん。
『ユウコさんへ』か、本当だ。
千夏ちゃん自身はもらわないの?」

それを受け取りながら私は目を見開いた。


きゃーーーっ!

学さんに、千夏ちゃん、って名前呼んでもらっちゃったよお!

すっごく嬉しい!!


にやけそうになる頬を引き締めながら私は答えた。

「共演者の方に私がサイン頼んでもいいんでしょうか?」


だって、私もデビューして一応女優になったわけだし。

スポーツ選手とか、自分と違うフィールドの人ならいいような気もするんだけど。

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