女優デビュー
「別にいいんじゃない?」

え?

いいの?

いいんなら是非、学さんのサイン欲しいんですけど!

軽く答える学さんの返事に戸惑って、私は悟君の顔を見た。

悟君はただニコニコ微笑んでいた。


するとそこに石田さんが現れた。

「ちょっと2人ともいいかな?」

「「あ、はい!」」


私と悟君が声を合わせて返事をすると、学さんは黙ってヒラヒラと手を振って部屋を出て行ってしまった。


あー、残念。

もうちょっとお喋りしたかったなぁ。

名残惜しげに学さんの後ろ姿を見送っていると、石田さんに咳払いされてしまった。

いけない、いけない。

私は石田さんに向き直った。


「千夏さん、あなたはもう一般人ではないんですから、共演者の方々はみなさん一緒に仕事をする先輩、ということを忘れないように」

「はい……」

また叱られちゃったよ。

でも、やっぱそうだよね。

共演者の学さんにサインもらうなんてだめだよね。

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