女優デビュー
念入りにローションや乳液を私の顔に塗りながら、優しくナッキーさんにそう言われ、私は思わず口に出していた。


「キス」


「え?」


ナッキーさんに聞き返され、私はちゃんと話すことにした。


「キスシーンがあるの」


ナッキーさんは手を止めて鏡の中の私を見た。


「悟君と?」


こっくりと私は頷いた。


「まだ先の撮影なんだけど、昨日新しい本もらって、見たら、書いてあった」


「そう。
悟君とじゃ嫌なの?」


ナッキーさんにそう聞かれた私は首を振った。

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