女優デビュー
母が夕食も一緒にというのを固辞して、学さんは小一時間で帰っていった。


二人きりになると、私は母が本当に賛成してくれているのか、聞いてみることにした。


本音と建前は違うかもしれない。


緊張しながら母に尋ねた。


「ね、お母さん。
学さんとのこと、ホントのところどう思う?」


母は紅茶のカップを下げながら、上機嫌に答えた。


「素敵な人ね~。
テレビで見る以上にかっこいいし、しっかりしてるし。
あんな人が千夏を好いてくれるなんて、ありがたいことじゃない。
せいぜい逃げられないようにしっかり捕まえておきなさいよ!」


私はちょっと意外な思いで母を見た。


すると、母は私の目を見て言った。


「わざわざ挨拶に来てくれたけど、別にまだ結婚しようってわけじゃないでしょ。
学君が心変わりすれば、別れることだってある。
でも、真剣に思ってもらえてるうちは、恋を楽しめばいいんじゃない?」

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