女優デビュー
部屋に戻ると、ケータイに石田さんからの不在着信があった。
石田さんは結局、今日はテレビ局には戻らず、会えなかった。
すぐに折り返し電話した。
『あ、千夏さん、今日はすみませんでした』
「いえ。
あの、それで、あの記事のことですよね?」
『ええ。
どうやら社長が提案した交換条件だったようです』
「交換条件?」
私は意外な思いで石田さんの話を聞いた。
『ええ。
あなたのお母さんから、絶対に自分と娘の素性を明かさないで欲しいと頼まれて、その記事を止めるためにしかたなくこちらを書くことを了承した、とのことでした』