女優デビュー
身動きできないまま、目の前に来た奏真君の顔を凝視していると、奏真君はニッコリ微笑んだ。


ドキン!


そんな至近距離で王子スマイルしないで!


ドキドキドキドキ……


高鳴る心臓を自分ではどうにもできないでいると、



チュッ!



音を立てて、おでこにキスされてしまった!


「おやすみ」


「お、おやすみなさい!」


私は目を見開いてニッコリ微笑む奏真君を見つめたまま、なんとか挨拶を返した。


奏真君の顔に貼り付いて動かない視線を、私は無理やり引きはがし、

うまく動かない指でガチャガチャとシートベルトをはずして転げ落ちるように車を降りた。


ふわふわ落ち着かない足取りで私は家の門の中に入り、

振り返ると、奏真君は車の中から手を振って去っていった。


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