女優デビュー
私の母は今流行りのイケメンが大勢出てくるドラマが大好き。
そして、一番のお気に入りは人気急上昇中のイケメン俳優、
安西悟(アンザイサトル)君、18歳。
そして私はその悟君とドラマで共演することになったのだ。
先日私が優勝したのは、悟君の相手役を決めるための公開オーディション。
悟君主演のドラマのヒロインを一般から募集するって趣旨のオーディションだったワケ。
母は、
『もし千夏が優勝したら、悟君に会えるかも♪』
という不純な動機で私の応募を決めたらしい。
あとから聞いたんだけどね。
で、運よく、としか私には思えないんだけど、私は優勝してヒロイン役を射止めた。
これで悟君に会える♪、と母は大喜びしたんだけど。
私が契約した(っていうか母が決めた)芸能プロダクションからは石田さんという優秀なマネージャーさんが派遣されてきて、母の出番は皆無。
そのことを知った母は、私も行きたい~、とずっとダダをこねているのだ。
「では千夏さん、参りましょうか」
「はい!
じゃあ、お母さん、行ってくるね!」
「はーい、いってらっしゃーい……」
テンションの低い母に見送られ、私は石田さんのセダンの後部座席に乗り込んだ。