女優デビュー
リビングに入っていくと、母はパソコンに向き合って座っていた。


「夕飯食べてきたんでしょ?」

画面から目を離さずに言う。


私はちらっと画面を覗いた。


「また、ゲーム?」

「まあね~」

相変わらず私の顔は見ないまま、母は答えた。


最近、母は暇さえあればパソコンに向かっている。

恋愛シミュレーションゲームにはまっているらしい。


まったく、イケメンのドラマ好きといい、恋愛ゲーム好きといい、どっちが娘?って感じ。

お父さんが単身赴任しているからって、やりたい放題過ぎ。

でも、今日はそんなことはどうでもいい。

早く一人になりたい。


「シャワー浴びるねー」

「はーい、どうぞ~」

カチカチとマウスを動かしている母を尻目に私は自室へ引き上げ、荷物を下ろして浴室ヘ向かった。

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