女優デビュー
思い出すだけであの時のどきどきも蘇ってきた。

あー、仕事中にそんなこと考えてちゃダメダメ!

それでなくとも、私は演技が下手なのに。

集中、集中!


でも、その後も私は1度もディレクターさんに演技を直されることもなく、無事に撮影を終えることができた。


ふぅっ。

終わったー。



スタッフの皆さんに挨拶をしてスタジオを出たところで、また奏真君が声をかけてきた。


「千夏ちゃん!」


ドキ!


奏真君に声をかけられると、どうも意識しちゃう。

私がそっと振り返ると、奏真君は小走りに駆け寄ってきた。

私は隣に並んだ奏真君を見上げてぎこちなく微笑んだ。

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