女優デビュー
私は慌てて立ち上がった。


「違います!
セリフ合わせしてもらってただけです!」


私は顔を赤くしながら、手にしていた台本を学さんに突き付けた。

学さんは部屋に入ってきてDVDを悟君に手渡すと、私の突き出した台本を見た。


「ああ、セリフ合わせか。
熱心だなあ、エライエライ!」


信じてくれたのかくれてないのか、軽い調子でそう言うと、学さんは私の頭をポンポンとたたいた。


きゃあっ!

学さんとも普通に会話するのは慣れたけど、こんなふうに触られると、ドキドキしちゃう。

私は何も言い返せなくなり黙りこんで俯いた。


学さんは二言三言悟君と話すと「じゃあな」と出て行った。

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