女優デビュー
「来週の舞台も勉強がてら一緒に見に行かないかって誘ってたんだ」

悟君はチラシを石田さんに見せた。

すると、再び石田さんの表情が固くなった。

「一緒に?」

石田さんは悟君と私の顔を当分に見て言った。

「舞台には業界関係者も多く来るでしょう。
おかしな噂になったりしたら困ります」

「でも、俺も見たいし、千夏ちゃんにもいい勉強になると思うんだ。
あ、そうだ、2人きりがダメなら、石田さんも同行してよ。
それならいいでしょ?」

悟君が明るくそう言うと、石田さんは一瞬、虚をつかれたようにひるんだ。

しかし、一つ咳払いをすると、すぐにいつもの様子に戻った。

「わかりました。
それには同行しましょう。
しかし」

そこで、石田さんは私に顔を向けた。

「千夏さん、悟は非常に忙しい身です。
今現在1ヶ月以上休みなく働いています。
睡眠時間も1日平均4時間です。
あまり彼に負担をかけないように」

< 66 / 260 >

この作品をシェア

pagetop