女優デビュー
今さらながらドキドキしていると、クシュン、とくしゃみが出た。

うわ、私ってムードなさすぎ……

ずずっと鼻をすすると、学さんが声をかけてきた。

「あ、ごめん、寒かった?
俺、上着、車に置きっぱなしだ。
もう戻るか?」

「いえ、大丈夫です。
私、夜景ってちゃんと見に来たの初めてだから、もうちょっと見てていいですか?」

周りのカップルより、夜景をちゃんと目に焼き付けたくてそう言うと、学さんは優しく微笑んだ。

「ああ、いいよ」

そして、私がまた夜景に向き直ると、学さんは一歩後ろに下がった。

学さんにとっては見慣れた景色だから、もう飽きちゃったのかな?

ふとそう思ったら――


えええっ?

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