女優デビュー
6.揺れる乙女心
「おはよ~」
私がスタジオ横の前室で台本を読んでいると、学さんが入ってきた。
「おはようございます!」
私は台本を置き、立ち上がって挨拶した。
「あの、先日はどうも……」
私が頭を下げると、学さんは一人掛けのソファに腰を下ろしながら、からかうように目を細めた。
「メール、返事くれなかったじゃん」
私はわざとふくれて見せた。
「ああいうのはやめてください。
セクハラで訴えますよ!」
くすくす笑う学さんに憤慨していると、今度は奏真君が部屋に入ってきた。
「うっす!」
「あ、おはようございます!」
私は慌ててふくらませた頬を引っ込め、笑顔で挨拶した。